あきちゃんの結婚奮闘記 ②
一人っ子のあきちゃんは家を絶やすわけにはいかないと、30歳を超えるころやっと真剣に結婚のことを考えるようになりました。
カメラマンからせっかくプロポーズされたのに断ってしまったあきちゃんでしたが、それには大きな理由がありました。
それはカメラマンが2人だけの兄妹の長男だったからです。
責任感の強いあきちゃんに必要なのは婿養子だったのです。いくらふたりが求め合っていたとしても人様の家の大事な長男を婿養子にもらうわけにはいかないと考えていたのでした。
今のご時世、そんなに問題ではないと思っている人も多いかもしれませんが、跡継ぎ問題や苗字がなくなってしまう問題は当人たちにとっては深刻な問題なのです。
あきちゃんはカメラマンとの結婚はあきらめていたようですが、カメラマンの方はあきちゃんとの結婚以外は考えていませんでした。
何度も何度も、何年も何年もあきちゃんにプロポーズをしました。
でも跡継ぎ問題は残るのです。
婿養子のことを考える一方で、あきちゃんは他の問題も抱えていました。
年老いた両親が定年を迎え、自営業といえども理髪店を営んでいくのには体力がついていかなくなってきたのです。
いずれは両親の面倒を見ていかなければいけないと覚悟していました。
その上、自宅の老朽化問題がありました。
古くなった建物は使い勝手が悪いどころか、今にも倒壊しそうな状況。
建て替えの時期に来ていたのです。
婿養子とか、結婚どころの騒ぎではありません。
そこであきちゃんは思い切って建て替えをすることを両親に提案しました。
小学校3年生から家計を預かっていたあきちゃんはコツコツと貯金をし、
小さなビルを建てるくらいの頭金を用意できていました。
狭い敷地を最大限に有効利用するデザインを考え
1階には駐車場と理容室兼仕事場
2階は賃貸用
3階は両親の居住用とリビングとキッチン
4階は婿養子を迎え入れるための居住用
既に詳細な設計図が頭に浮かんでいたのです。
一人っ子のあきちゃんは高齢の両親を労わりながら、
しっかりと将来を見据えた計画を立てていたのでした。
建て替えにどのくらい時間がかかったのかはわかりませんが、
仮住まい先で両親を休ませ、あきちゃん自身は相変わらずヘアメイクの依頼やモデルとしての依頼であちこち駆けずり回っていました。
そしてようやく自宅が完成!
やっと家族が落ち着いて暮らせて、婿養子を迎え入れることができるマンションが完成したのでした。
これで落ち着いて婿養子を探せるようになったのです。